消防士(消防官)とは

消防士(消防官)は火災や台風、地震をはじめとした災害現場に出動し、消火や危険の排除、人命救助を行う職業です。災害対応以外にも、救急隊による傷病者の応急処置・搬送や、防災の予防啓発活動などさまざまな業務を行います。消防士、消防職員、消防官など、さまざまな呼ばれ方がありますが、「消防士」という呼び方は階級の名前です。正確には消火活動や人命救助に携わる人は「消防吏員(しょうぼうりいん)」と呼ばれ、その最初の階級が「消防士」と呼ばれます。

消防士は、地方自治体の地方公務員になるため、地方公務員試験に合格する必要があります。
都道府県の消防士を希望する人はもちろん、東京消防庁でより高度な人命救助に携わりたいとレスキュー隊員を希望する人も多くなっています。

そんな人々の命を守る消防士(消防官)になる方法や仕事内容、やりがいをご紹介します。

 

消防士(消防官)の仕事とは?

消防士とは火災現場での消火活動はもちろん、ほかにも救急や、救助活動といった人命救助に携わる責任ある仕事です。
基本的に消防本部の職員として勤務する消防士は地方公務員であり、各自治体に消防隊員として所属しています。
火災や自然災害、事故などの非常事態に対応するため、危険な状況やストレスの高い環境で働くことがあります。
そういった状況に対応するため24時間体制での勤務が求められることがあり、夜間や休日も含めてシフト勤務を行います。
火災現場や救助現場での作業は、身体能力や体力が求められるため、訓練やトレーニングにも努力を要します。

消防士は人命救助や火災鎮火などの重要な任務を担っています。そのため、緊急時の判断や決断、被災者や家族との対応など、精神的な負荷もあるということを知っておくとよいでしょう。

消防士の業務内容

消防士の詳しい業務内容は大きく4つに分けられます。

■消火活動
代表的な仕事は火災が起きた際の消火活動です。通報を受けたら消防車で現場に急行し、火災現場に到着すると、火災の規模や延焼状況、逃げ遅れた人の有無を迅速に確認し、消火ホースを用いて消火活動を行います。また、建物の内部に進入して火元を特定したり、煙の充満した空間での人命救助を並行して行う場合もあります。消火活動を担当するのは消防隊・ポンプ隊の消防士などになります。火災現場の状況を即座に確認して、被害を最小限に抑えるために消火を行います。

 

■救急活動
火災対応だけでなく、急病人やけが人が出た場合の救急活動も消防士の大切な役割です。急病人やけが人が発生した際に要請を受けて現場に急行し、応急処置を行って病院へ搬送します。交通事故や転落事故による重傷者に対して、救急車で現場に駆けつけ、応急処置を施します。これには心肺蘇生法やAEDを用いた救命処置、骨折や出血の応急手当などが含まれます。救急活動を担当するのは「救急救命士」と呼ばれる専門資格を持った救急隊員であり、医学的な知識と高度な技術を駆使して病院へ安全に搬送します。救急要請は年々増加しており、消防士の中でも重要性が高まっている分野です。

 

■事故や災害の際の救助活動
交通事故や自然災害における救助活動も重要な任務です。例えば、交通事故で自力では車から脱出できなくなった人や、災害で建物の下敷きになった人などを助け出すのが救助活動です。消防本部や消防署の中にある救助隊や特別救助隊に所属し、専門の訓練を受けた救助隊員が担当します。ロープを使った高所・低所からの救出、水難事故での潜水救助など、幅広い状況に対応できるよう、日ごろから訓練を重ねています。

 

■予防活動・防災活動
消防士の仕事は「火事や事故が起きてから動く」だけではありません。火災や災害を未然に防ぐための「予防活動」や「防災活動」も非常に重要です。建物や消火設備を検査や地域の防災計画の立案や、火災予防の意識を高める啓発活動、会社や学校、地域で行う防災訓練の指導も行います。そのほか、火災原因の調査など予防課などに所属する消防士が担当します。

 

消防士(消防官)のやりがいとは

消防士の一番のやりがいは、人々の命を守るという使命感でしょう。
火災や災害の現場で仲間と協力しながら迅速かつ勇敢に行動し、時に危険を冒しての救出活動を行います。 「ありがとう」「助かりました」という言葉をかけてもらったときには、この仕事をやっていて本当によかったと実感できるでしょう 。

また、消防士のやりがいは「現場」だけに留まりません。災害や事故の発生を未然に防ぐために、地域の安全教育や予防活動も行います。
日々の積み重ねが、将来の大きな災害被害を防ぎ、結果として多くの命と財産守ることにつながります。自分の活動が地域全体の安心・安全につながっているという誇りも、消防士ならではのやりがいです。

さらに、消防士の仕事は体力・技術・チームワークを常に磨き続ける必要があり、自分自身の成長を実感できる点も魅力のひとつです。過酷な訓練や緊迫した現場を乗り越えるたびに「以前より強くなった」「仲間との絆が深まった」と感じられることも大きな励みとなります。

消防士(消防官)になるには

 

 

まず消防士なるには、地方公務員採用試験を受験し合格する必要があり、その後半年ほど消防学校への入学が必要になります。

 

■消防士採用試験


地方公務員である消防士になるには、まず各自治体で行なわれる消防士の採用試験に合格しなければなりません。試験は筆記がメインの一次試験、面接などの二次試験に分かれており、両試験の結果を総合的に判断し合否が決められます。また、試験の日程が異なる自治体に関しては併願が可能です。

具体的には、一次試験(教養試験)では、数的処理や文章理解、人文(地理や歴史)・自然(化学や物理)・社会(法律や政治)科学などの筆記試験や作文・論文試験が課されます。

二次試験では、体力検査に加え、面接や口述試験といったいわゆる人物試験が課されることが多い傾向となります。面接試験も個別だけではなく、集団面接やあるテーマに沿って話し合うグループディスカッションといった面接試験が課されます。

消防士の採用試験の倍率は、試験年度や地域、採用区分によって大きく変動しますが、全国平均では約5倍から10倍程度と高く、合格率にすると10%程度になります。東京消防庁のような人気の高い自治体では倍率が高くなる傾向があり、倍率が低い自治体も存在します。
このように消防士採用試験は自治体により異なります。試験実施時期も自治体によって違う場合があるので自分の受けたい試験の日程を把握し、試験に向けて対策のスケジュールをたてておくと良いでしょう。

 

■消防学校


消防士採用試験に合格したら、消防学校に入学します。訓練や知識等を学び、半年間で修了するのが一般的です。消防学校で生活している間は、学校の制度やカリキュラムに則り、座学や実習を行ないます。公務員として知っておくべき知識、火災が起こるメカニズム、実習においては消火訓練や心肺蘇生などを学びます。

また、実際の訓練(ロープを使った訓練、はしご訓練、消火訓練など)があり、ハードな訓練を受けて一人前の消防士として現場に立てるように成長します。
消防学校でも当直のシフトを組み込むなど、消防士ならではの学校生活が特徴です。
なお消防学校では在学中でも自治体から給料や手当などの支給があり、一般的な学生とは異なります。

消防学校卒業後は本人の希望やスキル、通勤距離などを考慮して配属先が決定します。

多くの場合、現場での経験を積む目的として消防隊へ配属され、実際の消火活動を行います。

 

消防士(消防官)になるための試験や必要な受験資格とは

 

消防士になるための受験資格(学歴等)

消防士の主な受験資格は年齢です。また、消防士になるために受ける消防士採用試験は区分によって分かれており、それぞれ受験資格も異なります。

必ずしも学歴を満たさないといけないということはないので、きちんと確認しておきましょう。

 

試験の呼ばれ方は自治体により、様々です。

■Ⅰ類/大学卒業程度(大卒程度)/上級

■Ⅱ類/短期大学卒業程度(短大卒程度)/中級

■Ⅲ類/高校卒業程度(高卒程度)/初級

 

■専門系/大学卒業程度(大卒程度)+法律、建築などの専門知識をもつ人

Ⅰ~Ⅲ類は消防活動を担う職員、専門系は専門的な知識を活かして消防行政の中枢を担う職員を採用しています。

このように同じ「消防士採用試験」でも区分によりさまざまな条件があり、また一般的な公務員の受験資格とは異なる基準が設けられ、その基準は自治体によっても異なります。

高卒採用は比較的広く門戸が開かれており、一般的な教養試験を中心とした選考が行われます。一方、大卒採用ではより高度な知識や専門性が問われる場合が多いです。

待遇面や採用後の昇進スピードにも違いが生じることがあります。ただし、最終的には現場での実績や上司の評価などがキャリアアップに大きく影響しますので、学歴だけですべてが決まるわけではありません。

試験情報は自治体のホームページなどで提供されていますので、自身が該当する区分を確認しておきましょう。

消防士採用試験の試験内容


消防士採用試験は一定の学力も必要となります。適性検査の内容としては、上記でも説明したように一次試験・二次試験の二つの試験の結果で合否を決めます。

■一次試験:筆記試験(判断推理・文章理解・数的推理・資料解釈・図形判断(空間把握)・人文科学・社会科学・自然科学・一般科目)や、作文・論文試験など

■二次試験:面接、体力検査 といったものになり特別な知識や経験が必要ということはありません。

一次試験では筆記試験が中心となり、一般教養や数的処理、文章理解などの分野を幅広く学習する必要があります。第二次試験では面接や体力試験が行われることが多く、人柄やチームワークの適性、さらには緊急時に対応できる体力を持っているかを見極められます。面接では志望動機や心構えなど、消防士としての資質が問われるため、事前準備が必須です。

体力試験では、握力、上体起こし、長座体前屈、立ち幅跳びや反復横跳び、シャトルランなどが課されることがあります。

厳しい状況下で危険な業務をおこなうため、一定の体力や健康状態など身体的な基準を設けている自治体が多く、東京消防庁では身長・体重・胸囲などの基準も設けている場合があります。

自治体によって種目や基準が異なるため、事前に要項をしっかり確認することが大切です。特に、女性の応募者でも合否基準が明確に定められているところが増えているため、事前準備の方向性が定めやすくなっています。

消防士に向いている人の特徴

 

消防士は火災や災害の最前線で人命を守る仕事です。消防士の仕事は常に体力勝負のため、持久力や筋力に自信がある人はもちろん、過酷な環境でも心が折れずに最後までやり遂げる精神力を持つ人も向いています。

緊迫した場面でも冷静に状況を分析し、最適な行動を選択できる人は消防士として活躍できます。、また、火災現場では隊員同士が役割分担を行い、救急活動でも複数人で協力して処置や搬送を行います。仲間を信頼し、自分の役割を果たすことで最大の成果を発揮できるため、協調性のある人が向いています。
ほかにも、訓練や出動では規律を守ることが安全確保につながるため、自分を律して行動できる人が必要とされます。上下関係や指揮命令に従い、組織的に動けることは不可欠です。

また、消防士は市民と接する機会も多く、火災や事故現場での声かけ、救急活動での患者や家族への説明、地域での防災指導など、人との関わりは欠かせません。相手の立場を理解し、安心感を与えられるコミュニケーション能力は重要な資質です。

 

消防士の給料・年収について

 

消防士の平均年収は600万〜700万と言われていますが、公務員の場合、経験年数や階級によっても年収が増えていきます。
消防士の給与・年収は民間企業より比較的高い水準で安定した収入となっています。
夜間勤務や災害出動といった特殊勤務に対しては、手当が支給されることがあります。

また、一定の経験や試験に合格することで階級を上げていくことが可能です。将来的には消防署の管理職や本部での指揮監督業務、消防行政の企画立案など、キャリアの幅も広がり、それに応じて年収を増やすことが可能です。

昇格の制度は自治体によって異なる場合もあります。
消防士を目指すにあたり、キャリアパスについて研究しておくのも良いでしょう。

出展:キャリアガーデン

消防士を目指せる穴吹学園の学科

 

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