「将来は消防士になりたい!」

そう思っても、こんな不安が頭をよぎることはありませんか?

「自分は運動神経が抜群なわけじゃないし…」

「厳しい訓練についていけるか自信がない…」

「24時間勤務って、寝る時間はあるの?」

消防士(消防官・消防吏員)は、筋肉隆々でヒーローのような人、というイメージを持つ人も多いですよね。

でも、現場で本当に求められている能力は、実は「筋肉」よりも大切なことでした。

今回は、福山地区消防組合(広島県福山市)で、最前線の「救助隊(レスキュー)」として活躍する現役隊員・後藤さんに聞いた、「消防士のリアル」と「本当に向いている人」について紹介します。

誤解① 消防士は「筋トレ」ばかりしている?

現場で問われるのは「判断力」です

消防署のイメージといえば、トレーニングルームでひたすら重いバーベルを持ち上げている姿を思い浮かべるかもしれません。

しかし、後藤さんはこう言います。

「もちろん最低限の体力は必要ですが、特別なマシントレーニングばかりしているわけではありません。腕立て伏せや懸垂など、自分の体重を支えられる基礎体力(自重トレーニング)があれば十分です。あとは実際の業務の中で、必要な筋肉は勝手についていきます」

では、筋肉以上に現場で求められるものとは何でしょうか?

後藤さんが挙げたのは「判断力」でした。

「災害現場は、二度と同じ状況がありません。マニュアル通りにいかない場面で、いかに冷静に、素早くベストな行動を選べるか。それが人命救助の鍵を握ります。」

「優しさ」が「正しい判断」を生む

「判断力」と聞くと、生まれつきの才能やスキルのように感じるかもしれません。しかし、その土台にあるのは「優しさ」ではないでしょうか。

独りよがりな判断は、現場では命取りになります。

「自分が一番すごい」と過信せず、仲間の声に耳を傾けられる「素直さ」。

そして、助けを求めている人に心から寄り添える「優しさ」。

これらを持っている人こそが、結果として冷静で的確な判断を下し、市民を守れる消防士へと成長できるのです。

誤解② 24時間勤務はずっと動いている?

消防士の「リアルな業務」とは

「24時間勤務(隔日勤務)」と聞くと、「ずっと働きっぱなしで寝る時間もないのでは?」と不安になる人も多いでしょう。

実際には、現場への出動以外の時間は、次の救助活動に備えるための様々な業務を行っています。後藤さんの話や取材で見えた、リアルな仕事内容の一部ややりがいを紹介します。

1. 訓練(プロとしての準備)

救助隊の訓練は多岐にわたります。

例えば、「斜面救助訓練」。足場の悪い場所から要救助者を引き上げたり、高所から安全に降ろしたりする技術は、一朝一夕では身につきません。

2. 資機材・車両の点検

消防車や救急車、そして数えきれないほどの救助道具(資機材)。これらが現場で「動かない」ということは絶対に許されません。

毎日、一つひとつ丁寧に点検し、動作を確認する作業は、地味ですが最も重要な業務の一つです。

3. 事務・デスクワーク(報告書作成・会議)

意外と知られていないのが、デスクワークの多さです。 火災や救急の出動が終わるたびに、詳細な「活動報告書」を作成しなければなりません 。 また、夕方には事務整理を行ったり 、朝の申し送り(引継ぎ)で情報を共有したりと 、体を動かすだけでなく「頭を使う」仕事も意外と多くあります。

4. コミュニケーション(引継ぎ・団らん)

意外に思われるかもしれませんが、隊員同士がリラックスして会話する時間も大切な業務の一部です。

交代時の引継ぎや、会議の後にお茶を飲んで談笑する時間。

「家族よりも長い時間」を一緒に過ごし、本音で話し合える関係を作っておくこと。この「阿吽(あうん)の呼吸」が、命がけの現場での連携(チームワーク)を生み出します。

【現役隊員に聞く】消防士に向いている人・適性は?

後藤さんの実体験をもとに、「こんな人が消防士になれる」「向いている」というポイントをまとめました。

1. 「継続」して学べる人

消防士の仕事は、合格したら終わりではありません。 後藤さんも、「資機材(救助道具)はどんどん新しいものが導入される」と語っていました。

機能が進化すれば、操作方法も変わります。そのたびにマニュアルを読み込み、確実に扱えるようになるまで覚え直さなければなりません。 ベテランになっても現状に満足せず、常に新しい知識を吸収し続ける姿勢。この「学び」を継続できる人が、現場で長く活躍できるプロフェッショナルです。

2. 「自分は完璧ではない」という自覚がある人

意外かもしれませんが、自分の弱さを知っている人は強いです。

後藤さん自身、最初は資機材の扱いが覚えられず苦労したそうですが、「自分は不器用だ」と認めていたからこそ、人の倍メモを取り、同期に支えられて克服できました。

自分が完璧ではないと知っている人は、人のアドバイスを素直に聞けるし、困っている人に優しくなれます。

3. 「誰かの役に立ちたい」と思える人

これが一番の才能です。

「カッコいいから」という動機で入っても、最後は「目の前の人を助けたい」という熱意が、きつい訓練を乗り越えるエネルギーになります。

消防士になるための「最短ルート」は?

消防士になるには、各自治体が行う「消防官採用試験(公務員試験)」に合格する必要があります。

試験には「教養試験(筆記)」「体力試験(体力検査)」「面接」などがあり、特に近年は「面接」が重要視されています。

「仲間」がいれば、壁は越えられる

独学で目指す人もいますが、筆記試験の勉強や面接対策を一人で続けるのはモチベーション維持が大変です。

実際、後藤さんも高校時代は「面接」で一度不合格になり、専門学校(公務員学科)に入り直してリベンジを果たしました。

専門学校の最大のメリットは、「受験指導のプロに伴走してもらえること」そして「同じ夢を持つ仲間ができること」

面接に何度でも付き合ってくれる先生や、励まし合ったりできる仲間がいれば、合格への道のりはぐっと近づきます。

先輩のリアルな体験談を読んでみよう!

「不器用で自信がなかった」という後藤さんが、どうやって挫折を乗り越え、憧れのレスキュー隊員になれたのか。

そのストーリーは、以下の記事で詳しく紹介しています。

「自分にもできるかも」と思える勇気がもらえるはずです。ぜひ読んでみてください!

👉 【現役レスキュー隊員インタビュー】 「一人が100点でも命は救えない」不器用だった僕が、人命救助のプロになれた理由。

【撮影協力】
福山地区消防組合 深安消防署

ホームページ / 公式Facebook

※インタビュー内容は2025年12月現在のものです