その優しさが、市民の不安を溶かす。「伝わりやすさ」を大切に、窓口での思いやり。
「市役所の窓口」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?
淡々と書類を処理する場所? 少し難しくて堅苦しい場所?
福山市役所の本庁舎1階、多くの市民が訪れる保険年金課の窓口で笑顔をみせるHさん。
2022年に公務員学科を卒業し、現在入庁4年目。
「実は私、入庁したばかりの頃は電話に出るのが怖かったんです」

そう恥ずかしそうに笑うHさんですが、今や市民から「ありがとう、安心したよ」と感謝される頼もしいプロフェッショナル。
Hさんの武器は、難しい法律知識をひけらかすことではありません。
相手の心に寄り添う「優しさ」でした。
―― 今は具体的にどんなお仕事をされていますか?
国民健康保険の「給付」を担当しています。出産された方や、亡くなられた方、高額な医療費がかかった方などへの支給手続きを行う仕事です。
お金や健康に関わることなので、窓口に来られる市民の方は不安を抱えていることが多いんです。
―― 専門用語も多くて難しそうですね。
そうなんです。例えば今、マイナンバーカードへの移行で「資格確認書」という新しい書類ができているんですが……いきなり「資格確認書です」と言っても伝わらないですよね。
だから私は、「今まで病院で見せていた保険証の代わりになるものですよ」と、あえて噛み砕いてお伝えするようにしています。
―― 専門用語よりも、伝わりやすさを優先しているんですね。
はい。私たちが優先すべきなのは、専門用語で説明するよりも、目の前の市民の方に寄り添った「コトバ」選びをすることだと思うんです。
説明した後で、強張っていた市民の方の表情がふっと緩んで「助かったよ」と言っていただけると、この仕事をしていて本当によかったなと思います。

■ 「電話が怖い」からのスタート。支えてくれたのは“カッコイイ先輩”たち。
―― 今では堂々と対応されていますが、最初からうまくいったのですか?
いえいえ!最初は何もわからなくて、電話に出るのも怖くて……とりあえず保留にして先輩に助けを求めてばかりでした(笑)。
一度、私のミスで市民の方にご迷惑をおかけしてしまい、パニックになったことがあったんです。「どうしよう!」って頭が真っ白になってしまって……。
―― それは焦りますね……。どうやって乗り越えたんですか?
その時、先輩がすぐに「そういう状況なんだね」と冷静に整理してくれて。「じゃあ、まずはこう対応しよう」と、上司に報告する前に具体的な解決策を一緒に組み立ててくれたんです。
ミスを責めるのではなく、すぐに「立て直す方法」を一緒に考えてくれる。その姿がすごくカッコよくて。「私もいつか後輩ができたら、絶対にこういう先輩になろう」と心に決めました。
―― 福山市役所は、温かいチームワークがある職場なんですね。
本当に恵まれていると思います。一人で抱え込ませない雰囲気があるので、安心して成長できる環境です。

■ 苦手な数学は友達に教わればいい。「教え合い」で掴んだ合格。
―― 専門学校時代の話を聞かせてください。公務員試験の勉強は辛くありませんでしたか?
毎日が不安との戦いでした(笑)。
模試の結果が悪かったりすると「本当に受かるのかな」って落ち込んだりして。
でも、穴吹には「仲間」がいました。
私は数学が苦手だったんですが、得意な友人が教えてくれて。逆に私が得意な分野は友人に教える。そうやって休み時間のたびに、教室でお互いの弱点を補い合っていました。
―― まさに「共に合格する」ですね。
はい。一人で机に向かっているだけだったら、心が折れていたかもしれません。
それに、先生たちのサポートも手厚かったです。特に面接練習!
私はあがり症で面接が大の苦手だったんですが、先生が「これでもか!」というくらい練習に付き合ってくれて。
本番で、先生と練習した通りの質問が来たんですよ!
―― 苦手だったことが、ご自身の努力と仲間・先生のおかげで、不安が自信に変わったんですね。
そうですね。「これだけやったんだから大丈夫」と思えるまで準備したことが、今の仕事での姿勢にも繋がっていると思います。

■ 未来のプロフェッショナルたちへ
―― 最後に、公務員を目指す高校生にメッセージをお願いします。
「私なんかが公務員になれるかな」と不安に思うこともあるかもしれません。私も採用が決まるまでは、毎日が不安でした。
とにかく模試や面接練習に取り組み、先生方のアドバイスを取り入れ諦めずに頑張ることが大切だと思います。もちろん、合格して終わりではないので、私もまだまだ勉強することばかりです。
皆さんと一緒に働ける日を、楽しみに待っています!
編集後記
「優しさ」という最強のスキル
取材中、Hさんは「私は入庁した時の『何もわからない不安な気持ち』を忘れたくないんです」と語ってくれました。
知識が増えると、つい専門用語を使いたくなるもの。でもHさんは、常に「知識ゼロだった頃の自分」の目線に立ち戻り、市民に寄り添い続けています。
その優しさは、決して弱さではありません。複雑な制度と、市民の不安の間に入り、安心という形に翻訳して届ける。それは、学び、悩み、努力して手に入れた、立派な「プロの技術」だと感じました。
福山市役所の窓口には、今日もHさんの優しい声が響いています!
| 名前 | 勤務先 | 出身校 |
|---|---|---|
| H・Mさん | 福山市(事務職) | 大門高校 |