調理師を目指す学生たちにとって、この日は特別な一日となりました。京都の東山に位置するラグジュアリーホテル「パーク ハイアット 京都」より、総料理長の井料剛氏をお招きし、特別調理実習が開催されたのです。
実は「パーク ハイアット 京都」では、本校の卒業生も現役で活躍中。憧れのステージで指揮を執る総料理長から直接指導を受けられるとあって、実習室は開始前から心地よい緊張感に包まれていました。

1. 世界のニーズに応える「旬」と「多様性」の表現
井料 料理長が披露してくださったのは、全部で3品の珠玉のレシピ。そこには、京都ならではの旬の食材をどう美味しく提供するかという、プロの深い思考が詰まっていました。
進化するベジタリアン・ヴィーガン料理
近年、海外からの旅行客(インバウンド)が増える中で、欠かせないのが「ベジタリアン」や「ヴィーガン」の方々への対応です。今回披露された『カリフラワーのステーキ 豆腐フムス・自家製ハリッサ』は、肉や魚を使わなくても満足感を得られる工夫が凝らされていました。
「ハリッサ」という地中海生まれのピリ辛調味料をアクセントに使い、カリフラワーをダイナミックに焼き上げる技法に、学生たちは釘付け。多様な食のスタイルに応えることが、これからの料理人に求められる大切なスキルであることを学びました。

芸術的な一皿を仕上げる技術
他にも、濃厚な香りが広がる『ロブスタービスク』や、完璧な火入れが施された『鴨胸肉の低温調理』など、ホテルクオリティの料理が次々と完成していきます。 低温調理(食材を真空状態にし、一定の温度でじっくり加熱する技法)によって、鮮やかなピンク色に仕上がった鴨肉の美しさは、まさに圧巻。学生たちは完成した料理の香りを確かめ、一滴のソース、一片のハーブの配置に至るまで、プロの盛り付けを熱心にメモしていました。


2. 「100人のゲストに100点の料理を」プロの現場のリアル
実習中、井料 料理長が語った言葉の中で、特に学生たちの心に響いたものがあります。それは、ホテルという大規模な現場における 「時間」と「温度」の徹底管理についてです。

100点の一皿を全員に届けるために
「100人規模のパーティーでは、一品を100点で作ることは不可能ではないが、全員に100点の状態で届けるのは非常に難しい」 だからこそ、科学的な根拠に基づいた温度管理と、緻密な計算による時間配分が必要になります。誰か一人の料理が冷めてしまっては、それは最高のサービスとは言えません。
「最高の一皿」を、すべてのゲストに「最高の状態」で提供する。そのプロとしての責任感と覚悟に、学生たちは料理人という仕事の深さを改めて実感したようです。


夢の舞台へ羽ばたく学生たちへ
質疑応答の時間には、学生から積極的に質問が飛び出し、井料 料理長は一つひとつ丁寧に、かつ情熱的に答えてくださいました。 就職活動を控えた1年生にとっては、自分の将来像を描く大きな刺激に。そして4月からプロの世界へ飛び込む2年生にとっては、現場で生きるための大切な「心構え」を受け取る貴重な時間となりました。


最高の技術に触れ、料理の楽しさと厳しさの両方を学んだ学生たち。その瞳は、未来の自分たちの姿を見据えているかのように輝いていました。


